理事コメント/プロフィール




片山信彦(かたやま・のぶひこ)

ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長

1953年生まれ。大学卒業後、三井住友海上火災保険株式会社(旧大正海上火災)入社。92年特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン入団。99年イギリス マンチェスター大学大学院IDPMにて「社会開発」と「NGOマネージメント」を学ぶ。JANIC副理事長、教育協力NGOネットワーク(JNNE)代表

 

今日の日本も世界も問題山積みの感をまぬがれない。景気回復の遅れ、失業問題、社会保障、介護・医療の問題等々、更には国内の貧困問題が指摘されるに至っている。一方世界的には大幅には改善が見られない貧困問題、紛争、テロの続発、気候変動、環境問題などグローバル化の負の遺産が拡大しているように思える。これら地球規模課題の解決には従来の国家の枠を超えた対応が求められており、国内問題も含め、これらの問題に自ら取り組む市民社会の存在が必須に思える。社会的課題に取り組む市民社会の形成のために生まれたNPOの存在が大いに期待される所以である。全国に約4万あると言われるNPOが今日の閉鎖的状況を打破できるような“うねり”や運動の促進を市民会議に期待します。

社会的課題に取り組み、広く市民の支持と参加に立ったNPOをめざして、まずは自らの団体の変革に取り組みます。そして、より多くのNPOの理解と参加が得られるように市民会議の活動を進めて行きたいと思います。

 


 

 


工藤泰志(くどう・やすし) 

言論NPO代表

1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学博士課程中退。東洋経済新報社に入社し、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長などを歴任。2001年11月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任

 

私たちが「非営利組織評価研究会」という会議を発足させたのは二年前。この会議はその後、「検討会」に衣替えし、この11月に「『エクセレントNPO』 を目指そう市民会議」に正式に変わりました。非営利セクターの質の向上を目指す、目に見える変化を起こしたいという思いが、いよいよ活動として動き出しま す。

どうしたら、「強い市民社会」に向かう「良循環」をこの国で生み出せるのか。それが私たちの問題意識でした。日本の非営利セクターの実態を調査、分析 し、浮かび上がった答えは、非営利の世界に「質の競争」を起こすことでした。そのためにも、望ましいNPOの姿をしっかりと打ち立てようと考えました。会 議には国内外で活躍するNGOやNPOの代表者と専門家が集まり、2年がかりで完成させたのが、『エクセレントNPO』の評価基準でした。

私たちが提起している「質の競争」は、『エクセレントNPO』を目指す非営利組織の競い合いであり、社会の課題解決に向けた競争です。こうしたNPOが 社会から信頼され、その姿がはっきりと見えることで、非営利セクター全体の信頼の底上げとなり強い市民社会の受け皿として機能する展望も見えてくると考え ます。

 


 


武田晴人(たけだ・はるひと)

東京大学名誉教授

1949年、東京に生まれる。東京大学経済学部、同大学院経済学研究科博士課程を中退。1979年東京大学社会科学研究所助手、1981年同経済学部助教授、1991年同教授 現在に至る。

 

市民会議が提案する評価基準は、NPOが自己点検をするためのものさしです。それは、それぞれのNPOが自分達の優れた点、課題が残っているところを知り、長所を伸ばし、課題を克服するために用意されたものです。

『エクセレントNPO』とは、社会に働きかける力をもち、そのために多くの仲間たちが何らかのかたちで参画し、その志を支える絆を持った組織だと思います。私たちは、大きな組織の方が社会的な役割を果たせるという通念をもち、組織の大きさを基準に考えることに慣れています。しかし、それでは評価基準としては適切ではありません。自らの身の丈にあった活動をする姿の望ましさも、認めていけるような「質」の評価ができる基準が必要です。市民会議が提案する評価基準は、何よりも自分たちの組織の実態をできるだけ正確に知るためのものです。多くの組織がこれを利用して自己点検し、その結果を手掛かりに市民の支持が集まるような仕組みが作られることを願っています。

 


 


田中弥生(たなか・やよい)

(独)大学評価・学位授与機構 教授、言論NPO理事

国際公共政策博士、専門は非営利組織論、評価論。政府系金融機関、東京大学で客員准教授を経て現職。P.F.ドラッカーのもとで非営利組織の経営・評価について学び、同氏の著書を翻訳。著書に『NPO新時代 市民性創造のために』(明石書店)など

 

先日、ショッキングな情報を知った。この国の債務GDP比率は2010年末には200%に達するというものだ。第二次世界大戦で、わが国は300万人以上の死者を出したがこの時の債務GDP比率を上回る数字である。

国が破綻するということは実感をもって理解しにくい。しかし管財人によって管理される会社のごとく、コントロールされるのは、財政計画のみならず、そこから派生する様々な事項である。一言でいえば、今まで当たり前のこととして気づかなかった多くの自由が奪われるのである。

この国の再生力を信じたいが、その源泉は私たちひとりひとりの市民力である。政治、経済、社会のカタチをつくるのは、結局は私たちの有権者、消費者、納税者としての公共心と知性ある判断力だからである。そして、今、我々が直面する難題を誰かのせいにしたくてもブーメランのように己に戻ってくる。

知識社会の現代において、市民力を鍛える最適の器が民間非営利組織であると明言し、特に日本においてその役割が必要であると述べたのはP.F.ドラッカー氏である。しかし、日本の民間非営利組織は大きな潜在力を持ちながらもその力を発揮できていない。その原点を見失いかけているようにみえることさえある。

市民会議が作った「エクセレントNPO」評価基準は、民間非営利組織がその原点に戻り、市民力を鍛える器としてその力を十二分に発揮してもらうための支援ツールである。したがって、市民会議のゴールは強く豊かな市民社会であり、非営利セクターの質の向上はゴールに到達するためのプロセスである。

ドラッカー氏の「非営利組織の自己評価手法」を翻訳してから15年を経た今、多くの人々の力を頂きながら日本の非営利組織のための評価基準を作ることができた。氏の自己評価手法がそうであったように、「エクセレントNPO」が提示する「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の基準は非営利組織のみならず、企業や行政府機関にも適用しうるものではないかと思う。ドラッカー氏の想いをつなぎながら、私なりのメッセージを市民会議を通じて伝えていくことができれば幸いである。

 


 


堀江良彰(ほりえ・よしてる)

難民を助ける会事務局長

1968年生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(公法学)修了後、日本通運株式会社に勤務し、主に国際輸送を担当。2000年1月より難民を助ける会に勤務、05年4月から常任理事・事務局長。

 

「エクセレントNPOをめざそう市民会議」が立ち上がろうとしている。NPO法ができてから12年が経過し、4万を超える多くのNPO法人が設立された。数は増えたものの、その質という観点から見てみると残念ながら玉石混淆の感がある。市民社会を強くするためには、市民に広く開かれ、市民の信頼を得て、課題を解決するために行動するNPOの存在が不可欠だ。今こそ、我々自身が襟を正して、信頼される存在になっていく必要性を感じている。

強い市民社会を作ろうと思っているだけでは強い市民社会は生まれない。多様性を旨とするNPOの基準を問うということに賛否はあるかもしれない。しかし、公益を担う存在であるNPOは常にその質を問われるべき存在であることもまた事実であろう。この市民会議を通じてNPO同士が切磋琢磨し、相互に高めあっていけるような状態を作り出し、強い市民社会が生まれるきっかけになることを期待している。

 

 

監事プロフィール


 


関尚士(せき・ひさし)

シャンティ国際ボランティア会事務局長

1970年生まれ。90年より社団法人シャンティ国際ボランティア会(当時曹洞宗国際ボランティア会)に入職。ラオスにおける地域教育環境改善事業担当、緊急救援室室長、国内事業課長を歴任。2008年より理事・事務局長。