武田晴人

 エクセレントNPO大賞は、3つの部門賞受賞者の中から、市民性、課題解決力、組織力について総合的に優れた団体を表彰するものです。

 審査委員会は、第2回の「大賞」の受賞団体として組織力賞を受賞した「難民支援協会」を選び、大賞を授与することを決定しました。

 「難民支援協会」は、組織力に秀でているだけではなく、日本に逃れてきた難民の支援という比較的注目されにくい社会的な課題の解決に地道に取り組んでおり、寄付やボランティアを通した市民参加の機会を作ることにおいても積極的で堅実な実績を積んでいます。そうした点で総合的に見て大賞に相応しいと判断しました。

 この大賞の審査結果に関連して、二つのことを申し上げておきたいと思います。

 一つ目は、判定は僅差だったということです。特に部門賞、大賞を選考する段階では甲乙つけがたく審査委員会としても多くの意見が出されました。

 第1回と同様に、私は、予備審査の段階ですべての応募団体の書類に目を通し、さらにそこからたどれるホームページ情報などを参考に、それぞれの応募団体が、その使命を自覚し、よりよい組織を構築し、幅広い市民的な基盤のもとで、自ら目標とする課題の解決に取り組んでいる姿を見出し、これに心から敬服し、このようなたくさんの団体・組織が着実に日本の市民社会に展開していることのすばらしさを実感するにつれて、今日お招きしたノミネート団体だけではなく、もっと多くの非営利組織を受賞団体に推薦したいと思いを新たにしました。

 そうした中で、それらの応募団体の優劣を順位付け、受賞団体を絞り込むことはあまり楽しい作業ではありません。それぞれが「世界にただ一つの花」として個性的で賞賛に値するからです。ですから、ノミネート団体に残ることも、そこから各賞を受賞したことも、大賞を受賞したことも、それぞれに心からお祝いを申し上げるとともに、後続する団体・組織にも今後、大きな可能性があることもお伝えしたいと思います。

 もう一つは、大賞は、どのような意味でも「ゴール」ではない、ということです。優れた実績のある団体も、審査委員が望ましいと考えている非営利組織のあり方から見れば、つまり評価基準から見れば満点を与えうるようなものはありません。それぞれの組織について「まだちょっと」足りない、「もう少し」知恵を集め、工夫を施し、改善してほしいと思う点があります。昨年の第1回の大賞では、審査委員会は審査の手続きなどに配慮が十分でなかったことを理由に、大賞を選ぶことはしませんでした。選べなかったのです。しかし、その点について、今年はそうした手続き上の問題について配慮して審査を進めました。これはたいしたことではありませんし、皆さんが取り組まれている事柄の方が遙かに複雑で解決が困難なものです。そうした課題が完全に克服されることはないだろうとすら思います。だからこそ、こうしてエクセレントなNPOと評価されたとしても、それはゴールではないことを皆さんはよくご承知だろうと思います。審査委員の一人として、この受賞が皆さんの活動に何らかのプラスになることを願っていますが、同時に、「あとちょっと、もう少し」自己革新に取り組んで頂くことを期待しています。その意味では、受賞団体が、来年度以降もこれに応募し、改善のほどを報告して頂けることも希望しています。もちろん、その時には審査委員会は、1年後のプラスアルファーの部分の内容に注目して審査をすることになることは、予告しておきたいと思いますが、応募団体のさまざまな現状や変化を知ることは、評価基準をよりよいものにしていくためには不可欠だからです。

 それぞれに評価すべき点があり、それぞれに個性的で社会的な意味のある活動を続けているさまざまな非営利組織について、あえてこのような審査の機会を設けているのは、誰が一番かを探すためではありません。私たちは、非営利組織が明日の日本にとって重要な役割を果たすと確信しています。

 だからこそ、このエクセレントNPO大賞を設けたのです。それは、広い市民的な基盤のもとに、その使命に見合う組織を整え、主体的に課題解決に取り組んでいく非営利組織が、その組織の現在に満足することなく自己革新を遂げ、強い市民社会をつくることに大きな役割を果たすことを期待して作られたものです。そこで求められていることは、自らの長所を知り、それを伸ばすとともに、弱点も的確に捉え、これをどのように解決していくことができるか、そういう組織能力を鍛えることです。多くの非営利組織が自らの現在を確認し、組織革新に求められる課題を見い出すためのツールとして評価基準を活用していただくことを心から願っていることをお伝えして、講評の結びといたします。