共同代表紹介


 


私は、市民社会を強くするということは、世界の政治上の問題や社会問題を考えたときに最も考えなくてはいけないトピックの一つだと考えています。実証的な統計をとっていくと、現在、政党、機関、企業といった既存の制度や組織に対する不信感が世界中の先進国を覆っています。日本も例外ではありません。しかし、こうした制度不信、組織不信というのは翻って考えれば自己不信なのです。それらは自分たちがつくったもので、自己責任であるはずなのに、その制度や組織を自分とは関係ないもののように思っているところに問題があります。私は、これは一人一人の市民の意識がまだ十分成長してないことと深い関係があると考えています。この問題を解消するためには、市民自身が直接市民運動をしたり、制度的にエスタブリッシュされたルートとは別に違う方法で社会に身を投じることによって、自分たちが時代や地域や社会に参加していることを実感していくことしかないだろうと私は思います。つまり、市民自身が変わらなければならないのです。そういう意味で、制度や組織に対する不信感が世界中にみなぎっている今というのは、市民社会成熟のチャンスでもあり、市民社会の役割というのは、実は今一番大事なことではないかと私は考えています。だからこそ、この『エクセレントNPO』の評価基準において、NPOを、市民を社会に繋げていく参加の舞台であると捉えていることにはとても大きな意味があると思います。

 小倉和夫(おぐら・かずお)

国際交流基金顧問

1962年外務省入省後、OECD日本代表部参事官、駐ベトナム大使、駐韓国大使、駐フランス大使等を歴任。退官後、青山学院大学国際政治経済学部教授に就任。2003年より現職。

 


 


「エクセレントNPO」の評価基準は、営利組織にとっても非営利組織にとっても、その全てが重要であると思うのですが、中でも私が重視したいのは「市民に対して自分たちの活動をいかにして伝えていくか」ということです。企業ではCSRレポート公表しますが、私も日産自動車でCSRレポートの作成を担当していたことがありました。その作成にあたって、当時ゴーン社長から言われたことは、保守的にならず、誠実に、誰でも理解できるような言葉でストーリー性をもって伝えるように、ということでした。そして、このCSRレポートを発表した後に、レポートに対して外部の方々から意見を出していただく機会を設けました。つまり、CSRレポートを通じた市民との対話の機会です。

このような市民との対話の機会というのは、企業でだけでなく、非営利組織でも作る必要があるのではないかと私は考えています。ですから、非営利組織が、自分たちの活動をこの評価基準に基づいて自己点検し、その結果をウェブ上などでレポートとして公表することが望ましいのではないかと私は考えています。その際、このレポートというのは自分たちの活動を、ストーリー性をもって誠実にわかりやすく伝えるものでなくてはなりません。そして、このレポートに対して一般の市民から意見を募り、フィードバックする機会をつくることで、非営利組織と市民とが対話する機会ができると思うのです。このようにすれば、非営利セクターにおける質の向上のためだけでなく、市民と非営利組織とのコミュニケーションツールとしても、この評価基準というのは機能するのではないかと私は考えています。

島田京子(しまだ・きょうこ)

横浜市芸術文化振興財団代表理事、専務理事

1967年日産自動車入社後、社会貢献・CSR等を担当。2005年学校法人日本女子大学で、理事・事務局長などを歴任。内閣府「新しい公共」円卓会議委員等も務める。2010年より現職。