エクセレントNPO大賞 「組織力賞」審査講評

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担当主査 武田晴人

1.審査の視点

 「組織力賞」では、エクセレントNPOの評価基準に沿って、組織の使命や目的を示す文書によって組織の課題が明確になっているか、それらの方針や、その方針に基づく事業の成果がホームページなどで公開されているのかなど情報開示、資金調達の多様性や透明性などの点を中心に、審査が行われました。それは、多数の多様な関わりを持つステークホルダー(事業の中核を担う指導的な人たちだけでなく、ボランティア、あるいは資金提供者)が、その組織の目標に向かって一体となって事業を推進する条件が整っているのかどうかを問いかけるものだと言い換えてもよいかもしれません。

 資金的な基盤に注目しているのは、組織力という視点で見たとき、その多様性が組織の持続性を保証する条件の一つと考えているからです。資金源の多様性は、「市民性」に関わる評価と共通するものですが、特定の資金源(たとえば、行政からの補助金、あるいは特定企業からの寄付)などに依存する場合には、その資金供給側の事情の変化によって、その非営利組織の活動が継続不能に陥るリスクを伴っています。特定の資金源に依存している組織は、その事情のために情報の公開や、課題の共有の明確さなどの、組織力に関する他の評価ポイントでは高い評価を受けるものがありましたが、ここでの評価は、いずれかといえば、広く多様な人々の支援を組織の基盤に持っていることを重視しています。

2.審査結果

 このような考え方に沿った審査の結果、予備審査で審査対象とされた24団体のうちから、「組織力賞」を受賞したのが、「かものはしプロジェクト」と「難民支援協会」です。

 「かものはしプロジェクト」は、強制的に子どもが売られてしまう問題を防止する活動を、持続的かつ発展的に行い世界の子どもたちが未来への希望を持って生きられるよう活動しています。資金調達のための事業活動も展開していますが、会費、寄付金の比率も高く収入基盤が安定しています。また、10年を超える歴史の中で、その管理体制も整えられています。「国際性がある点、日本のNPOのモデルとなり得よう」と評価する委員もいたほどです。  

 「難民支援協会」は、1999年の設立以来、日本に逃れてきた難民が自立した生活を安心して送れるように支援する組織です。法的支援・生活支援・定住支援の三つの支援活動を柱に地道な活動を続けるなかで、組織基盤を固めており、収入基盤が分散されています。また、組織の規律や資金調達のための規律について明確な方針をもっており、この点で日本のNPOの模範となり得るものと思います。

 受賞には至りませんでしたが、ノミネートされた他の3組織も、受賞に匹敵するような高い組織力を持っていると考えています。  

 「国際ボランティア学生協会」は、1992年に国士舘大学で行った「夢企画」をきっかけに作られた学生を主体とする組織で、「国際協力」「環境保護」「地域活性化」「災害救援」の4つの分野を軸に活動をしています。多数の学生会員を組織していること、その会費収入が大きな収入基盤となっていること、そして「会員が10名以上いる大学ごとにクラブ」を作り、それぞれのクラブが自主的にその大学の所在する地域に根ざした活動を行う、ボトムアップ型の組織運営体制に特徴があります。その点では市民性という点からも高い評価を与えることができます。

 「NPOカタリバ」は、2001年の設立以来、子ども・若者への教育活動を行ってきた組織で、高校生へのキャリア学習プログラム「カタリ場」と、被災地の放課後学校「コラボ・スクール」の主に2つの活動を行っています。会費や寄付金の収入比率が高いなかで、さらに収入多様性強化に努めています。歴史の中で形成された繰越正味資産が大きく、財務面で活動の継続性の基礎が固められています。また、自己評価に真摯に取り組んでいる点は好感が持てます。この姿勢は、エクセレントNPO評価基準による自己評価・自己点検のあり方の望ましい例ということができます。

 「環境市民」は、1992年に京都でうまれた組織で、地球規模の環境問題を視野に入れた実践活動を地域で行い、さらに戦略的な行動提案を行うことを活動の目的に掲げる組織です。受託事業を安定的に確保して事業を続けてきていることは、この組織の強みです。その反面で収入の大半が受託事業収入である点については、自覚的に改善に取り組んでいますので、その成果に期待したいところです。環境問題という重要な課題に対する提案創造型の活動の実績は課題解決力という点でも評価できるものです。

3.今後の課題

 組織力賞の受賞団体・ノミネート団体・組織は、いずれも10年以上の活動実績がある組織となりました。それは、それぞれの団体・組織が活動を継続するなかで、その目的・使命にふさわしい組織を整備してきたことを示しています。経営史家アルフレッド・チャンドラーは、「組織は戦略に従う」という有名な命題を提示しています。これは営利企業の話ですが、組織が先にあるわけではなく、経営戦略が組織のあり方を決めることになるということです。この命題は、非営利組織でも当てはまります。しかし、実際の非営利組織の中には、様々な法的な制度に対応する必要があって、使命に照らしてみるとあまりに過剰な組織体制をとっているものも見受けられます。反対に強いリーダーシップに支えられているとはいえ、組織の整備が未熟であるというケースも少なくありませんでした。その意味では、その組織のあり方は、その組織の使命や目的に見合ったものなのか、そしてその組織は、その使命を持続的に遂行できる基盤を十分に持っているのかを、問いかけ続ける必要を痛感します。

 審査の側で組織力を評価するという面では、どうしても大規模な事業を展開している組織や、それなりの年輪を重ねた組織の方が、優れているように見えてしまうというバイアスがあります。このような外見的な印象に惑わされないように、今後も審査の手法や、必要な情報の収集について工夫していかなければならないと考えています。